カスタマーレビュー
おすすめ度:
新海監督らしい作品 
(2007-06-17)
ファンタジーやSF的な要素は全く無いが、その代わりに、他のアニメにはない程のリアリティがこの作品にはあると思う。背景はとても綺麗だと思いました。ある意味、実写では表現できないことをアニメで表現していると思う。ストーリーがダメだと言う人もいますが、あえて多くを語らないことによって見た人に考えさせる。考えることで見えてくる何かがあるのではないでしょうかね? 一話と二話は起承転結がしっかりとしているのに対して、三話は起句で終わっているのだと思います。そっから先は見た人の想像でお願いします的な終わり方です。エンディングの演出は新海監督の必殺技的な演出ですね。それを心地良いと感じる人もいれば、ワンパターンだと思う人もいるわけです。どちらにせよ、山崎まさよしさんの曲が無ければこの作品は成立しないと思います。もちろん各所の天門さんの音楽も素晴らしいです。個人的には、期待通りの作品であり、予想通りの作品だった。
自分的には百点!! 
(2007-06-11)
映像美はもちろんですが、ストーリーもステキです。
客観的に考えると、誰にでもお薦めできる作品ではないです。
細かい部分が描かれていないストーリー、少ない台詞、時間の短さ。
普段見慣れている映画と比べると、もの足りなさを感じる人がいると思います。
しかし、その足りない部分を各個人がそれぞれの経験や記憶で補完することで
グッと主人公を身近に感じると思います。
ある意味ズルくて卑怯な手法だと思いますが、それが手法だと分かった上でも、
それ以上の感動がありました。
携帯電話が無い時代。
「大人」でない自分を言い訳にした後悔。
「いまさら」と思いつつ「でも、いまなら」と考えてしまう自分。
そして、その想いを強制的に、そして鮮やかに思い出させる「音楽」。
「音楽」を「タイムマシーン」と考えることが、ほぼSF的要素がない今作において、
唯一のSF的トリックだったと思います。
もう一度観たいという思いが強い作品です。
30歳前後の男性には特にオススメします。
ひと恋するはいつも切なきなり 
(2007-06-06)
桜の咲く4月の上旬、平日の最終回、渋谷のシネマライズで単身鑑賞した。
ガラガラの客席で静かに落涙いたしました。滅多にないことだが以後3回劇場に通った。
以後、会う人毎に勧めてまわった。
『騙されたと思って観に行って。傑作だから!』
山崎まさよしの名曲「One more time, One more chance」が効果的にテーマソングとして使われている。
監督が、この楽曲からインスパイアされてストーリーを紡いだことは明かだろう。
さてストーリー。
小学校の卒業と同時に離ればなれになった遠野貴樹と篠原明里。
まだランドセルを背負ってる12歳です、二人は。
特別な想いで文通なんぞするわけです。
男の子の九州転校が決まった中学1年の3月、彼は彼女の住む栃木まで行く決心をする。
その日は、昼過ぎから大雪となる・・・。
貴樹と明里の再会の日を描いた『桜花抄』。ここまでで30分弱。
鹿児島(種子島)で高校生になった貴樹。
彼を懸想する同級生・香苗の視点から描いた『コスモナウト』。これも30分弱。
そして彼らの来し方行く末を無数のフラッシュバックとコラージュで切り取った表題作『秒速5センチメートル』。これが10分弱。
以上、構成上は「a chain of short stories about their distance 連作短篇アニメーション」という形態をとっている。
第一話で一人称で語っていた彼が、第二話では一人称の彼女によって対象として語られ、そして短い第三話では、すっかり成人した彼と彼女を俯瞰し、高らかにテーマソングが流れ、観客の想像力と余韻を刺激して締めくくられる。
ただ待つ人がいる約束の場所へ行くこと、告白できずにいる焦れた日々、そして永遠に巡り逢えない二人。
画面は精巧に再構成され、圧倒的な色彩、そして光と影が登場人物たちの心象とシンクロする。
情感溢れる風景。丹念な日常描写。距離と成長で変質してゆく幼く淡い恋心がリリカルに描かれていた。
しかし、良く考えてみると、視点を変えたようでも、やはりこれは3話とも男性が理想としている人物像なのだ。
1.純真無垢な少年
2.可愛く健気な少女
3.翳のあるヒロイックな青年
女性のほうが常に現実的で強靭である。
ラストに賛否あるようであるが、これは甘くノスタルジックな大人のメルヘンだと思う。
どこにでもあること 
(2007-06-06)
これは、とてもよく新海さんの世界観が表現されている作品です
たぶん、何度も何度も繰り返し観ていく事でどんどん、
よさが沁みてくる、そんな作品です。
そうであるが故に、賛否のわかれる作品でもある様な気がします
わかりやすく観る者の感情を揺さぶる作品ではありません
もっとやさしく、沁みいってくるそういう作品ですね。
わかりにくいと感じる人もいるかもしれません。
でも、そういう作品なのではないかと思います。
絵に関しては、あらためて語る必要はないでしょう
映像美、そしてその映像美に溶け込まない、
しっかりと[生きている]キャラクターたち。
あらためて新海さんの作品だなと思いました。
すべては結末のために。 
(2007-06-02)
作品自体は三部構成となっていますが、第一部、第二部はプロローグに過ぎません。
一部と二部で語られる物語のすべての要素は、第三部「秒速5センチメートル」のためだけに存在します。
その点を念頭に置いて鑑賞する事が出来れば、必ずしもハッピーではないかもしれないストーリーや、
その大部分を山崎まさよしの歌によって語られる第三部をより深く、納得して見る事が出来るのではないでしょうか。
さて、主人公である貴樹の行動を通して語られるのは、少年の純粋性や危うさ、それ故に強調される現実の残酷さであったり、
理由もなく感じてしまう恋愛感情の永遠性だったりといった、かつて少年だった男性ならば誰しもが共感し得るストーリーです。
男性は得てして恋愛に関してはとてもナイーヴであったりするものです。
男というのは、ある種女性に対しての(幻想とも言える)絆を強く感じてしまう生き物だと言えます。
本作は、恋に捕らわれてしまった、限りなくピュアで限りなく狂気に近い、ある男の物語なのです。
その点女性であれば、貴樹ではなく明里や花苗に感情移入して見る事が出来るでしょう。
そして忘れてはならないのが映像の美しさ。
これまでの新海作品にも増して、印象的な光の描写や背景美術の秀麗さ、細やかさが光っています。
新海監督は「記憶の中の光は、増幅され、鮮やかなものになっている気がするんです。本来の光よりもっと強くて、もっと綺麗で……」と語っています。
ともすると過剰とも取れる光の描写は、記憶の底に眠っている不確かな記憶を呼び起こさせます。
そして懐かしいような寂しいような、自身の青く未熟だった頃を思い返せるのかも知れません。
奇しくも桜の季節に始まって、桜の季節に終わりを迎える物語。
果たして彼らの魂は長い旅のすえにどこへ行き着くのでしょうか。
かつて恋していたすべての人に、そしてリアルタイムで恋する若者にもぜひ見てほしい作品です。